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そして、そのあと千春は俺にさらに深い印象を与えたのだ。
「樹さん。この料理ってなんて名前か知ってますか?」
千春は目の前のビュフェ台の上に視線を合わせて俺に尋ねた。クリームに包まれたじゃがいも、玉ねぎ、アンチョビなどの上にたっぷりのチーズが乗せられた料理だった。
「『 ヤンソンさんの誘惑』っていうスウェーデン料理だね」
「ヤンソンさんの誘惑!? なんですかその名前!」
「スウェーデンでは一般的な家庭料理だよ。ヤンソンっていう菜食主義の宗教家が、この料理の誘惑に負けて食べちゃったってのが由来だったかな」
本日のパーティーが行われているホテルは近くにスウェーデン大使館があり、スウェーデン料理屋も付近に何軒か並んでいる。
ホテル内にもスウェーデン料理の店があったような気がするな。そんなわけか、今日のビュッフェのメニューにはスウェーデン料理が多い。
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