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知れば知るほど、私は彼の稀有でまっさらな魅力にはまっていった。
付き合ってくれてからずっと、私を大切にしてくれていた誠くん。
「千春を大事にしたいから」という彼とは、23歳になった今でもキスだけの関係だった。まあ、私はそういった方面のことに明るくないから、それでも十分幸せだったけどね。
ーーそれなのに。
いきなり「他に好きな人ができた」って……。そんなのありなの!?
「ーーで。愛する誠くんに振られたから、小説が書けなくなった。そういうわけか」
「そうなのおおお! もう無理ぃぃぃ!」
ドライに淡々と事実を話す樹さんに、私は号泣しながら訴える。アルコールが入り、人目はばからず感情をあらわにする私。
こんなのヤケ酒しなきゃやってらんないよ!
「締切が」と樹さんは渋い顔したが、どうせもう今日は書けないと訴えたら渋々許してくれた。
今日最初に見せたプロットは誠くんに振られる前に取り掛かったからあっさり終わったけれど。
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