キスが無いと無理なんです

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明後日締切の中編は後回しにしていて、誠くんに別れを告げられたあと、さあ頑張って書き始めようとしたらーー。 まったく筆が進まなかったのだ。 「もう全然書けない! 頭の中誠くんでいっぱいでええ! ど、どうしよう樹さーん!?」 「ーーどうしようって。こっちが聞きたいわ」 必死に訴える私に、樹さんは苦笑を浮かべて呆れたように言う。 「なんでそんな冷たいの!? もっと優しくしてよおお!」 「…………。俺が優しくしたら書けるの?」 「書けないけど!」 「…………そう」 樹さんは、はあーっと大袈裟に嘆息をしてウィスキーのロックを一口。 私はビールのジョッキを引っつかむと、ごくごくと一気飲みをし、プハーっと親父くさく息を吐いた。 「……千春。飲みすぎ」 「これが飲まないでいられる!? 今日くらい飲ませてよお! 誠くーん! あ!すいません! 生もう1杯ください!」
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