キスが無いと無理なんです

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ーーだけど。 「誠くんだけは別! 初恋で長く愛し合った人だったんだから!」 物書きは他の職業よりも、孤独な時間の多い仕事だ。ーーたぶん。他の仕事したことないからよく知らないけど。 樹さんは常に淡々としているけど、私を気にかけてはくれていて、頻繁に連絡をくれたり差し入れで好物を持ってきてくれたりはする。 しかし、私が小説家になって親しくなった人間は彼だけだ。作家同士の交流会や受賞パーティーに頻繁に出席すればいいのかもしれないけど、人見知りでそういう華やかな場所は苦手だから、避けてきていた。 ーーそんな私の心の支えが、誠くんだったのだ。私の部屋に来ては、「千春、仕事大丈夫?」と心配してくれた。 食事もとらずに机に向かって作業を続ける私のために、簡単なものを作ってくれ、一緒に食べることもあった。
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