抱っこは恥ずかしいのです

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抱っこは恥ずかしいのです

ドレスは窮屈で着づらいから好きじゃない。 メイクだってヘアセットだって、いつもは最低限、数分で終わらせてしまう私。 パーティー向けの「それなりの感じ」に自分で仕上げたら、なんだかそれだけで疲れてしまった。 まあ、メイクはどうせ眼鏡でほとんど隠れてしまうから、かなり適当だけれど。それでもいつもよりは、きらびやかにしたつもりではある。 お店に行ってやってもらえばいいのかもしれないけど、こんなちんちくりんの私にプロの手が加わったところで、何かが変わるとは思えない。時間とお金の無駄、とすら思える。 自室に置いてある姿見に、自分でつくりあげたパーティー仕様の私を写す。 控えめな胸に、細い腰。体のラインが出るパーティードレスはいつも以上に私の幼児体型を露わにしていて、深くため息をつかされる。 ーーもう23歳なのになあ。まるで成長してないわ。あーあ。グラマーになってモデル歩きをしてみたい。やっぱり男の人はみんな、そういう女の人の方が、好きだと思うし。 誠くんは私にはずっと優しかったけれど、フレンチキス以上の行為はなかった。驚くべきことに。年頃の男女が5年も交際をしておいて。 私のことを大切に思っていたのかもしれない。そう思いたいけれど、やっぱり私に女としての魅力がないから、そういう気が起きなかったのではないだろうか。
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