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頭の中は、あなたでいっぱいです
受賞パーティーから数日たった日のこと。編集部にて打ち合わせがあり、1人赴いた私。
打ち合わせ内容は私と樹さんを含めた数名のメンバーで行った、去年刊行した小説の映画化の件だった。
小説の映画化は嬉しいけれど、私の小説は過去に何度か映画化しているので、打ち合わせはこなれた感じで滞りなく進んだ。
樹さんの私への気持ちを知ってからこの数日間、彼と2人でコミュニケーションをとる機会はなかった。
連絡だって、もともと仕事以外のことはしない私たち。樹さんからの連絡はなかったし、まだ気持ちがごちゃついている私から彼にメールやら電話をすることなんてもちろん出来なかった。
今日は樹さん以外にも何人も人がいる打ち合わせで、私は内心安堵していた。二人きりじゃないから、事務的な話をするだけで済む。
打ち合わせが終わると、樹さんはすぐに編集部の誰かに話しかけられ、会話を始めていた。チャンスとばかりに私はそそくさと編集部から出る。
すると、エレベーターのボタンを押す直前に、スマートフォンが振動した。振動の仕方から察すると、
誰かから電話がかかってきたようだった。私はスマートフォンを手に取る。すると、画面に表示されていた名前はーー。
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