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「だからガキだっちゅーんだよ」
フンッと鼻で嘲笑う。
小馬鹿にしたようなその態度に、パティスは先ほどまでの不安も忘れて激昂した。
「何でそうなるのよ!」
パティスのその様子に、ブレイズは面倒臭そうに「やれやれ」とつぶやいてから、ひたと彼女を見据えた。
「お前が聞いて欲しいってんなら話しゃぁいい。聞いてやるよ。俺は大人だからな。けど本人が話したくねぇもんはイチイチ聞いたりしねぇよ。無理矢理聞き出したって人間は嘘をつくしな。んなもん聞いたって時間の無駄だ。俺は無駄は好きじゃねぇ。それだけのことだ」
だから好きにしろ。
つまりはそういうこと。
年の割にしっかりしていると自負していただけに、初対面の――しかもかなり不躾な――男に子ども扱いされたことが悔しくて、唇を噛み締めてうつむくパティス。
「――で?」
そんな自分のあごへブレイズの片手が無造作に伸び、伏せていた顔を上向かされる。余りに無遠慮なその態度に文句の一つでも言ってやろうと彼を睨み付けたら深紅の瞳と視線がぶつかってしまった。
その瞳に見つめられると、何故か蛇に睨まれたカエルよろしく動けなくなる。
薄暗くて今までは気付かなかったけれど、近くで見ると黒ずくめのこの男はとても整った顔をしていた。
ピジョンブラッドの宝玉がおさまった切れ長の目。それを縁取るまつげは思いのほか長く、鼻梁もスッと通っていた。象牙色の、どこか人間離れした美しさを放つ肌はまるでビスクドールのようだ。
年のころは二十代後半ぐらいだろうか。
見下ろされることは不快だったはずなのに、無意識のうちにそんな彼に見とれてしまっていた。
「話したいからきっかけを作ったんだろ? お前は何故公園で泣いてたんだ? 聞いてやるから話せ」
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