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ブレイズの顔にうっとりと心奪われたパティスの頭を現実に引き戻したのは、皮肉にも当の本人から発せられた言葉だった。
限りなく外見に不釣合いな口汚さに、パティスは我知らず溜め息を漏らす。
一瞬でもこんな奴を素敵だと感じてしまったなんて物凄く不覚だ。
(口さえ開かなければかなりの色男なのに)
脳裏に浮かんだその言葉は、悔しいので口には出さずにおいた。
「……今は言いたくないっ!」
かろうじてそれだけ吐き捨てると、パティスはあごにかけられたブレイズの手を、顔を軽くひねることで振り解いた。
聞いてもらいたくてきっかけを作ったというブレイズの言葉は、多分間違っていない。
だから自分でも今の態度は物凄くワガママだったと認める。
でも、こんな風に聞かれて「はい、実は」と話せるほど無神経にはなれなかった。
「……そうか」
ブレイズから小言の一つぐらい降ってくるかと思っていたのに、あっさりきびすを返されてしまって驚く。
「行くぞ」
自分の思いとは裏腹に、何も言われず背中を向けられたことに、パティスは何故か寂しさを覚える。
(もう少し追求してくれてもいいのに……)
ふとそう思ってから、自分がひどく子供じみた考えを抱いたことに苦笑した。
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