リカルド・カルーゾの椅子

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上杉が、顔を真っ赤に上気させて唸っている。 「なあ、兄弟。俺はあの鳴沢の子分になるのだけは御免被りたいぜ。あいつだけは好きになれねえ。だけど、呪いの椅子に下手に座って死にたくもねえ」 「そりゃそうだ」 「なあ、どうすりゃいいんだよ」 「こうするしか、ねえよなあ」 俺は立ち上がった。てめえの命がどうとか、考えもしなかったと言えば嘘になる。だが、ただ手をこまねいてオタオタしてるうちに、鳴沢の子分にさせられちまうのだけは御免だった。 人は一生に一度、勝負に出なけりゃならない時が必ず訪れる。 勝負を逃したら最後、二度と勝機は巡ってこない。 だから俺は、やってやる。この命、天道に預けてやる。 「おーい、親分。その呪いの椅子、あっしにも座らせて貰いますぜ」 俺の声に、数十人の幹部が、一斉にざわめいた。 「ぬう、柏木。おまえも座るか。まあいいだろう。鳴沢と順番に座って、男を見せい」 親分は、あまり気乗りしないふうだ。当然だ。散々っぱら嫌っている俺に跡目なんぞとられたら、泣くにも泣けねえからなあ。
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