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白いジャージ姿の若者達がふたり、現れた。ふたりが組になって、古ぼけた西洋椅子を一脚、運んで来た。それが、上座の親分の座布団の脇に置かれた。
古ぼけた西洋椅子。厳かに鎮座している。
「これだ。これなのだ」
親分が、椅子を舐めるように見ながら、目を細めた。
「香港ヤクザの楊から、友好の証として譲り受けたのだ」
上座の親分の言葉に、若頭が食いついた。
「オヤジ。まさかその椅子、テレビの怪奇特番でやってた例の噂のアレですかい」
親分は笑った。厭な笑いだった。
「そうだ。これが噂の、リカルド・カルーゾの椅子なのだ」
皆、隣に座る者の耳元に、一斉に囁き始めた。
隣の上杉が、俺の耳に囁きかける。
「兄弟よ。なんだいその、リカルドなんとかの椅子ってのは?」
「呪いの椅子さ」
「の、呪い?」
「そうだよ、兄弟。リカルド・カルーゾの呪いの椅子さ」
知っている。俺は知っている。
俺じゃなくても、テレビの怪奇特番を見たヤツや、オカルト好きなヤツなら誰でもみんな知っている。
リカルド・カルーゾの呪いの椅子。
致死率百パーセントの呪いの椅子。
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