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他に名乗り出る者はいなかった。
「なあ、兄弟。死なないでくれよな」
心配顔の上杉の肩を叩いて俺は言う。
「アイツが死んで俺が生き延びたら、あんたを若頭にしてやるよ」
「そうか、ありがとう。頼むぜ、兄弟。死ぬなよ!」
「まかせとけ」
俺と鳴沢は、呪いの椅子の前に並んだ。
狐みたいな面した狡猾な鳴沢が、蛇そのものの目で俺を睨んでいる。
「柏木。てめえ、ビビって小便漏らすんじゃねえぞ」
「鳴沢。てめえは呪われて死ぬ。俺も椅子に座るからには、もちろん呪われるだろうが、てめえみたいに柔じゃねえから、俺は絶対に死なねえ。跡目は俺のもんだ」
「てめえ。ふざけやがって」
「鳴沢、俺は負けねえ。俺は生きる」
午後三時。時間だ。
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