リカルド・カルーゾの椅子

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他に名乗り出る者はいなかった。 「なあ、兄弟。死なないでくれよな」 心配顔の上杉の肩を叩いて俺は言う。 「アイツが死んで俺が生き延びたら、あんたを若頭にしてやるよ」 「そうか、ありがとう。頼むぜ、兄弟。死ぬなよ!」 「まかせとけ」 俺と鳴沢は、呪いの椅子の前に並んだ。 狐みたいな面した狡猾な鳴沢が、蛇そのものの目で俺を睨んでいる。 「柏木。てめえ、ビビって小便漏らすんじゃねえぞ」 「鳴沢。てめえは呪われて死ぬ。俺も椅子に座るからには、もちろん呪われるだろうが、てめえみたいに(ヤワ)じゃねえから、俺は絶対に死なねえ。跡目は俺のもんだ」 「てめえ。ふざけやがって」 「鳴沢、俺は負けねえ。俺は生きる」 午後三時。時間だ。
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