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悪魔の所業
日航123便墜落事故の三年前。一九八二年から首相の座に就いた中曽根康弘。
当時の米国大統領はロナルド・レーガン。
二人はすぐに意気投合し、中曽根はレーガンに対して、米国対日貿易赤字の解消と、日本の防衛力強化を約束する。
二〇一九年現在の日米関係を彷彿とさせるが、中曽根政権時代も、日米の貿易不均衡解消と、日本の防衛力強化に向けて、日米は足並みを揃えていた。
そうした背景のなか、中曽根政権対野党の最大の争点が、防衛費のGDP1%枠をめぐる攻防であった。
かつて三木政権時代、日本の軍事大国化を懸念した三木首相は、防衛費をGDPの1%以内に抑えることを決定した。
しかし中曽根康弘は、自身の政権下において、この1%枠を撤廃したかった。
1%枠を撤廃し、自衛隊の防衛力強化を図りたい矢先に、自衛隊機が民間機を墜落させていたとしたら、野党や世論はどう反応したであろうか。
おそらく、政権や官僚上層部は責任を追及され、防衛費の1%枠撤廃は頓挫していた可能性が高い。
政策の足枷となる自衛隊の不始末を隠蔽するために、中曽根は事故調査委員会に虚偽の発表をさせた。
想像するのも恐ろしいが、こう考えても不思議はない。
もちろん、人の心を持つ我々には理解しがたい、悪魔の所業と言わざるを得ないのだが。
さらに、中曽根康弘と民間航空機事故には、奇妙な因縁があった。
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