ぬくもりがほしい

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ぬくもりがほしい

 夢。希望。勇気。   ――それさえ持っていれば生きていける。  そうだ。そうなんだ。  どんなに軽蔑されようと、どんなに屈辱を与えられようと、僕は生きている。  生きているんだーーーーーーーーーーーっ。    と、力いっぱい奮い立たせたが、今の僕は小さな小さな極小なプランクトンのようなものだ。  幾度となく、大好きな安藤美依菜に告白をしようと試みたのにすべて玉砕した。  何が悪いんだ――。  何がイケなかったのか?  何が、何が、何が欠けていたのかっ?  わかってるんだ……、勇気だろ……。  夢と希望まではいい、ただ思い描くだけでいいんだから……。  でもね、勇気だけは行動に移さなければいけないんだ。  そして、その勇気というやつは、すぐに消滅してしまう。  バカヤローーーーーーっ!  僕は、青空に向かって叫んだ。  見上げた空には一匹のカラスが飛んでいた。  アイツも孤独なんだろうか?  僕と同じ境遇なのか?  そうか、そうなのか――。  お互い頑張ろうぜっ!  ホントにイケてない男――広瀬三津留。  それが僕の名前だ。  十六才になったというのに、 「好きだ」  と、ひとことさえ言えない小心者の情けないヤツなんだ……。  しかし、そんな僕に美依菜は勇気を与えてくれる。  あの笑顔さえ見てしまえば、勇気は1000倍にもなる。  問題は、その勇気がどこまで持続するかなんだが、僕の場合、かなり早く消沈してしまう。  どうすれば……。  そうだ、萎んでしまうまでに、告白すればいいだけのこと――しかし、勇気くんは一瞬で崩壊してしまうのだ。  どうやって持続すればいいんだ。  誰か教えてーーーーーーーっ! 「何も勇気なんて持たなくてもいいのよ。いつも通りの平常心で、普通に話しかけたらいいだけのこと」 「そっか、そうなんだ。平常心に勇気はいらないよね」  って、君は誰……?  あーーーーーっ!  安藤美依菜、十六才。僕のいとしの人だっ!  固まった――。  この状況、シチュエーション。  何度も経験したこの場面。  むっ、いつもは、ここで、諦めてしまうから、失敗するんだ。  今だ、今このガチガチになった状態で言うのだ。 「好きだって……」  ――あっ、言ってしまった……。  美依菜の顔を見た。  ずっと微笑んだままだ。  ふわふわしてる。  僕もなんか、ふわふわしてくる。  そう、この幸福感こそが、何よりの活力剤。    スタミナドリンクなんてもういらないっ!  僕は、僕は、僕は……、 「ホントに君のことが、大スキなんだっ!!! 付き合ってくださいっ」  言えた。  なんという達成感。なんという満足感。今や僕は摩天楼から飛び跳ねてもいいくらい有頂天になっていた。  もう勇気くんはいらない。  二度と逢うことはないだろう……。  さよなら、勇気くん。。。    ――って、こんな小説、ダメですか……。  今はただ、ぬくもりがほしい……。  ――ただ、それだけなんだ。
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