第9章 TEAR DROP

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 ライブ会場は熱気に包まれている。  ナリたちがステージに立つと観客席からたくさんのエールが飛び交った。みんなが彼らを祝福し、デビューを喜んでいる。  わたしは一番うしろでライブを見ていた。  サイジさんはクールにベースを弾いている。ときどきサイジさんが観客席に視線を移すと、女の子たちからキャーキャーと歓声があがった。  ナリたちのライブは最高だった。  そしてラストの曲となり、ナリが語りはじめた。 「俺たちは同じ大学で出会って、このバンドを組んだんだ。それまで音楽といったらカラオケぐらいだった俺に『バンドに入らないか?』って誘ってくれたのがサイジだった。楽器ができないという理由で、メンバーに無理やりボーカルにさせられて……。そんな格好悪い理由だったけど、メンバーには感謝している。あれから何年も経ったけど、俺たちがいまここに立っていられるのは応援してくれるみんなのおかげだよ。初めてライブをやった場所がここ。ひどい演奏だった。お客が全員帰っちゃって、ライブのあとメンバーみんなで泣き明かしたよ。そんな俺たちの原点がここなんだ。だから今日が最後じゃなくて、また絶対にここに戻ってくるよ。恥ずかしくないようにがんばってくるから」  わたしの知らないメンバーの歴史。夢を追い続けることは決して簡単なことじゃない。  すごいな。ここまでの道のりがどれだけのものだったのか想像がつかないけれど、人生を賭けてここまできたんだ。
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