第2章 やさしいひと

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 佐野先生との時間は台風のように過ぎたような気がする。わたしの心のなかは短時間でかき乱され、あとに残ったのは抜け殻のようなわたし。いったい、あれはなんだったのだろう。過ぎてしまうと、そう思ってしまうくらいあっけなく感じた。  それと同時にほっとした。よかった、思っていたより平気だ。たぶん時間が過ぎれば、もとのわたしに戻れる。ひとりでも平気な自分に。  それなのに五日後の金曜日の深夜、佐野先生がバイト先のファミレスにやって来た。 「嘘!? なんで!?」 「輝がここでバイトしているって言ってたから。ちょうど腹も減ってたし」 「……そ、そうですか」  そんな話もしていたな。でもまさか来てくれるとは思わなかった。  佐野先生はマンションでひとり暮らし。現在勤務している小学校の近くで、このファミレスからも徒歩圏内のところに住んでいるらしいが、ファミレスにはほとんど行かないと言っていた。たいていコンビニや弁当屋で買ってすませ、気分によって蕎麦屋やラーメン屋に行くぐらいだそうだ。 「席に案内しないのかよ?」 「あ、すみません」  わたしがボーッと突っ立っていたので、佐野先生が不思議そうに首をかしげている。  いけない、すっかり忘れていた。いまは仕事中だ。
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