プロローグ

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「こんばんは、輝ちゃん。今日も相変わらずかわいいねえ」 「今日はミツヒデさんに会えると思って、気合を入れて化粧しました」  ギターをかついだミツヒデさんと、これまたいつものように言葉をかわす。ミツヒデさんは人あたりがよくて、人懐っこい。  そのミツヒデさんのあとに仲間が続く。総勢六名のこの集団はぞろぞろと歩いて、いつもの窓際の席についた。  ファミレスの近くに小さなライブハウスと音楽スタジオがある。そのため、とくに週末の夜はライブ帰りの人やバンドマンが立ち寄ることが多い。  ミツヒデさんたちもバンドマン。週末に月一ぐらいの割合でライブをし、ライブのない日は音楽スタジオで練習をしている。その帰りに必ずといっていいほどこのファミレスに寄るのだ。  わたしは彼らの音楽は聞いたことはないけれど、イケメンぞろいなので、来店するたびに目の保養をさせてもらっている。  お冷をテーブルに置くと、オーダーをとるためにエプロンのポケットからハンディを出した。 「いつものでいいですか?」 「それで頼むわ」  ボーカルの『ナリ』という愛称の人が答える。  彼らがいつも頼むのはフライドポテト、ソーセージの盛り合わせ、大根サラダ、鶏のから揚げ。それからトマトソースとペペロンチーノの二種類のパスタとドリンクバーだった。毎回、メニューを見て考えるのが面倒なので、「しばらく同じメニューでいいよ」とナリが言ったのだ。
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