プロローグ

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 短めの黒髪のナリは中性的で、女性ウケするようなきれいな顔立ち。さらにボーカルだけあって、よく通る澄んだ声をしている。  ベースのサイジさんは一見クールだけれど、話してみると温厚であったかい人。笑ったときの奥二重の目がやさしそうに細まるのを見るたびに癒やされる。  ドラムのトオルさんは無邪気でお調子者。メンバーのなかで一番落ち着きのない人なのに既婚者だと知ったときは心の底から驚いた。  キーボードのシグレさんはこのバンドのリーダー。しっかり者でまじめな性格。面倒見がよくて、メンバーから厚い信頼がある。  そして、さっきのギターのミツヒデさんを入れて五人のメンバーだ。  バンドの結成は大学一年の頃だそうで、いまはメンバー全員が社会人。シグレさん、トオルさん、ミツヒデさんはサラリーマンで、ナリとサイジさんはフリーターだそうだ。少し前に年齢を尋ねたら、全員今年で二十四歳になると言っていた。ということは、バンドを結成してかれこれ五年ほどということになる。 「カザネ。俺、ウーロン」  ナリが隣に座っている女の人にぶっきらぼうに言った。  彼女はメンバーではない。詳しいことは知らないけれど、昔からの知り合いらしい。メンバーと同い年くらいなので、同じ大学出身なのかもしれない。  つぶらな瞳にカールした長いまつ毛。鼻筋は通り、ぽってりとした唇が色っぽい。ゆるくかかったパーマはトリートメントも手を抜いていないのか、いつも艶々(つやつや)。細身なのにやけに色っぽくて魅力的な容姿だった。
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