1005人が本棚に入れています
本棚に追加
/216ページ
バイトあけの日曜日の昼間。久しぶりにおしゃれをした。
今日はガーリーに決めてみよう。そう思い、マスタード色のシャツワンピにしてみた。膝下丈のワンピースのウエストを黒のタッセルベルトでしぼり、ベージュの厚底サンダルを合わせた。我ながら気合が入っていると思う。
本当はこれからデートと言いたいところだけれど、一年前に大失恋をして、それ以来ずっと彼氏はいない。別れた直後は落ち込む日々で、休日が憂鬱に思うほどだった。
でも最近はそう思うこともなくなった。慣れとは怖い。逆にひとりでいるのが楽だと思うようになり、ひとりカラオケ、ひとりお好み焼き、ひとりパンケーキ、さらには初詣のひとり参拝も経験した。
今日はとても天気がいい。少し日射しは強いけれど、不快な暑さではない。わたしは電車で隣駅まで行くと、駅近くのファストフード店で昼食をとり、食後にぶらぶらとあてもなく歩いていた。
駅前なので人通りが多い。わたしは人混みをかきわけ、次はどこに行こうかと視線をさまよわせた。
そのとき、反対側の歩道にいる挙動不審な人物が目に止まった。
妙に気になるその動き。立ち止まり、興味本位でその顔をたしかめたら、驚いたことに見覚えのある人物だった。
懐かしい。
彼とは七年ぶりの再会だった。
「お久しぶりです」
小走りで駆け寄って声をかけると、彼は急に目の前に現れたわたしに仰天した。
「君、だ、誰!?」
「嘘? 教え子の顔を忘れちゃったんですか?」
「教え子? ああ、そっかそっか。ちょ、ちょっと待ってろ、いま思い出すから」
最初のコメントを投稿しよう!