青山くんと足立さん

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青山くんと足立さん

6月。 朝からどんよりしていた空模様。 天気予報の教えてくれた通りに、帰宅しようとする私の足を止めさせた。 『うわ…降ってきちゃったなぁ…』 今まさに昇降口を出ようとしたところで、ポツポツと小さな雨粒が降ってきた。 あーあ。 先生の頼まれごとなんか引き受けなきゃ良かった。 『足立(あだち)?なにやってんの?』 『青山(あおやま)くん!』 同じクラスの青山くんが下駄箱のところから声をかけてきた。 『足立って部活してたっけ?』 『ううん。先生に掲示物の作成頼まれてて。 さっきまでパソコン室に籠ってた。』 『あぁ、なるほど。それはお疲れ様。』 ニコッと爽やかに笑うと、青山君も自分の下駄箱を開けた。 すると、下駄箱からパラパラとなにか落ちてきた。 『えっ!?それ、ラブレター?』 『なんだろうね?』 苦笑い。 いやいや。絶対ラブレターだよ! 確かにうちのクラスの青山くんと言えば 成績優秀、スポーツ万能、街を歩けばスカウトにあたると言われるイケメン。 極めつけは、性格がとてもいい。 高校に入って偶然青山くんの隣の席になって 毎日話すうちに、青山くんはほんとに良く出来た人だなぁって感心しない日はない。 私がしょっちゅう担任から雑用を押し付けられてるのを見かねて、よく放課後一緒に作業してくれたり。 そんな彼だから、当然モテる。 他のクラスどころか、上級生の間でも青山くんの存在は知られている。 先生でさえ、青山くんには一目おいてるのだ。
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