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第一話 繰り返す思い出 第1節
この梅雨の季節に野原を歩いていると、多く見かけるのは名も知れぬ野草の黄色や白の小さな花たちだ。
しかし、時折、そんな花の群れの中に小さな青い花を見つけることがある。
青といっても、それほど鮮やかな青ではなく、どちらかというとちょっとくすんだ薄い青だ。
僕はそんなあまり目立たない小さな青い花に心惹かれる。
え?僕の名前?
僕の名前は『楡島 光一』、古めかしい名前だねと良く言われるけれど、自分としてはそうは思わないし、むしろこの名前が気に入っているくらいだ。
え?僕の年?
これでもまだ28歳だ。これでもというのは結構老けて見られるからで、良く言われるのが「30代半ばくらい?」というものだ。
ちょっと心外なんだけれど、まあ趣味や服装が地味なので自分でも仕方が無いかなと思っている。
服装の色使いは上下で焦げ茶色と濃い黄土色、暗い緑と暗い濃紺の色の組み合わせなどで、「服選びのセンスが無いよね?」などと良く言われたりもする。
僕の職業はSE(システムエンジニア)だ。
中位の規模の会社で、まあ、だいたい毎年同じ顧客の仕事を請け負うことが多いので、仕事の要領は良くわかっている。
そのためか、世間で良く言われるようなSEの仕事は残業や徹夜続きで大変だという事実は、今のところ僕にはそれ程当てはまっていないのはラッキーなことかもしれない。
そんな訳で、今日の日曜もどんよりとした曇り空だけど、こうして家から車で1時間半ほどの高原の野原を散策できるんだ。
え?、僕の趣味が何かって?
そうだね。やはりちょっと地味なんだけれど、こうして野原を歩きながら自分の好きな花や景色(主に花だけど)を写真に撮ってインスタグラムに投稿することなんだ。
以前は自分でホームページを立ち上げて、そこに写真を綺麗にトリミングして掲載し、その写真を撮ったときの状況や旅行記を載せていたりしたけれど、仕事の忙しさもあって段々と煩わしくなって、その次はブログに掲載したりもしたんだけれど、今はインスタで落ち着いている。
なので、あまり長い文章は載せていないんだ。
でも、スマホのカメラで撮影しているわけではないよ。
実は冬のボーナスをつぎ込んだ十数万円のデジタル一眼レフのカメラを持っているんだ。
そのカメラのデジタルエフェクトの機能を使って、撮った画像を少し見栄え良くした後にスマフォに転送し、そこからインスタに投稿している。
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