第一話 繰り返す思い出 第3節

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「えっ?本当?」  逆に僕は驚き、彼女が指し示した画像の部分を良く見てみた。  すると、妖精の女の子が下に飛び降りている瞬間を捉えたようで、女の子の黄緑の髪と上に伸ばした両腕の一部が画面の下に写っていた。 「飛び降りたのか!」  驚いている僕の顔を彼女はじっと見ていた。 「その様子じゃ、どうも本当のようね」  百合菜はそう言うと、少し笑った。 「最初に見たときはあなたが作ったCGの合成かと一瞬思ったけど、拡大してもとっても自然な画像で、しかも1枚後の写真にあなたは気づいていなかったし」 「おいおい、なんだか探偵みたいだな」  百合菜の洞察力に僕はちょっとどぎまぎとしていた。  そのとき、お店のスタッフの女の子が僕たちが座るテーブルに近づいてきた。 「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」 「あ、ごめんなさい。今から決めるのでちょっと待って」  百合菜はメニューとにらめっこした。 「えーと、今日は光一のおごりだし、ブランチも食べ損なったし」  と少し笑いつつ僕を見て、 「じゃあ、スペシャルサンドのアイスコーヒーセットで...光一は?」 「あ、えーと、そうだ僕もお昼食べてなかった。じゃあオニオンバーガーのアイスコーヒーセットで」 「...ご注文を繰り返させていただきます。スペシャルサンドのアイスコーヒーセットを1つ、オニオンバーガーのアイスコーヒーセットを1つ、以上でよろしかったでしょうか?」  スタッフの女の子は言った。 「はい」  なぜだか、僕と百合菜の返事がハモってしまった。 「それでは、メニューをお下げします」  スタッフの女の子はそういうとクルリと向きを変えて厨房の方に歩いていった。  それを見届けた百合菜は再び口を開いた。 「花の妖精って、日本にもいるのかな?ヨーロッパの国にはいそうだけどね」 「日本にいてもおかしくないんじゃないかな?」  僕は彼女が妖精の写真を素直に受け入れてくれたことの喜びをかみしめつつ、 「そういえば、昔、子供のころ、コロボックルという小人が出てくる小説を読んだことがあるよ」 「あー、それなら、私も読んだことがある...実は...コロボックルって本当にいるとか?」  彼女は手を組み、少し首を傾けつつそう言った。 「そうだね。本当にいるのかもしれないね」  僕がそう答えると、 「この妖精の女の子。あなたのカメラの方を見ているよね?」  僕が気付いたことを彼女も指摘したが、続けて、 「明らかにカメラ目線よね。これって偶然なのかな?」  と鋭いことを言い出した。 「え?偶然じゃないってことは...意図的にってこと?」  僕は彼女の発想にまた驚かされた。
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