第一話 繰り返す思い出 最終節

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第一話 繰り返す思い出 最終節

「百合菜、こんなタイミングで言うのは、ちょっと突然かもしれないけれど...」  僕はドキドキしながらも思い切って続けた。 「僕と結婚してください!一緒になって欲しい...だからSEにならずに今のままプログラマーで、仕事もできれば軽くして欲しいんだ。その代わり僕が一生懸命働くよ!」    彼女は僕の返答に少し驚いたようであったが、顔には嬉しさが浮かんでいるように見えた。 「わかったわ...少し、考えさせてくれる?返事するから」  百合菜はちょっと上目遣いで、僕の目を見てそう言った。  僕はドキドキの中で、 「うん。わかった。待っているよ」 と答えた。 「ねぇ、光一。あなたの服の取り合わせ、まだまだ、だよね?今度の日曜に、ヨネクロに服選びに行こうか?私が選んであげるから」  百合菜がいきなり話を変えてきたので、僕はちょっと狐につままれたような感じになったが、 「あー、そうだね。いまいちかな?」 と答えた。 「ダメだよ。変えなきゃ。不思議よね。光一って、絵画や写真の色使いには細かいのにね。紺屋の白袴ってやつかな?」  百合菜の言葉に僕は、 「その通り、紺屋の白袴なんだ」  そして二人とも笑い合い、その後はとりとめのない会話をして、食事を終えた。 「今日は、まだ掃除機かけて片付けしなきゃいけないから」と彼女が言うので、  店を出てから車で彼女を家の前まで送り、「また日曜に」と言って別れた。
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