冒頭

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冒頭

「ごめんな。」 男は、出来て間もないような、ピカピカの墓の前に座り、線香と蝋燭にライターで火をつけ、静かに両手をあわせて目を閉じた。 どのくらい時間がたったのであろうか。男は、手を合わせたまま、しばらく動くことはなかった。 「もっと、お前達を信じてあげたらな。でも、ようやく気持ちにケリがついたよ。 こうして、墓を建てることができたんだ。」 男は、そう呟くと、ゆっくりと目を開けて立ち上がった。 「これから、俺がやることを、天から見てておくれよ。これが、俺なりの、ささやかな償いだ。このやり方が、正しいかは分からないけど。 でも、お前達には、分かってほしい。 決して、お前達の死は、無駄にはしないから。それは約束するよ。 全てが終わったら、また報告に来るよ。 その時には、全てが変わる。 お前達の無念は、絶対に晴れるはずだ。」 男は、決心した顔つきで軽く頷き、墓場を後にした。 「もう、いいんですか?」 墓地から出てきた男に、中年の男性が車の窓から顔を出して声をかけてきた。 「ああ。そうだ。今から行くぞ。」 男は、中年の男性の質問に、一言、そう返事をした。男の返事を聞き、中年の男性は、男に問いかけた。 「ここからは、簡単なことではないと思います。決着には、どれくらいの時間がかかるかも分かりません。」 男は、力強い表情で、中年の男性の問いに答えた。 「分かっている。もう、戦う決心はついている。なんなら、俺だけでも大丈夫だ。今まで世話になったな。ありがとう。感謝している。」 男はそう言ったが、中年の男性は直ぐに否定をした。 「いやいや、何を言っているんですか。これは、元々は、俺が見つけたことなんですよ。最後まで、一緒に戦いましょう。っていうか、絶対に最後まで一緒にいますからね。」 中年の男性の言葉に、男は、少し安心したような表情をした。 「分かった。ありがとう。そう言ってもらえると、心強いよ。」 男の表情を見た中年の男性は、笑顔で頷いた。 「では、お乗りください。約束の時間まで、もうすぐです。」 「ああ。」 男は、中年の男性の車に、助手席側から入った。 男が乗車すると、直ぐに車は出発した。
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