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見ちゃった、だから。
「~♪よし、できたっと!」
「やっほ。一緒に帰ろ。あれ、何書いてたの?」
「ふふっ、ナーイショ!」
「えーっ」
「あはは、ごめんって。今はまだナイショなの。そのうちちゃんと話すからさ、ね?」
「....よしわかった。じゃあコンビニのお菓子でゆるす!」
「なんかたかられた!?うーん、まあ、○ロルチョコとか○まい棒くらいなら買ってあげてもいーよ。帰りに寄ろっ」
「まじ!?やったらラッキー♪約束ね!」
「はいはい、調子いーんだから」
放課後。嬉しそうにはにかむ君が大切そうに鞄に閉まったモノから、目が離せなくて。
「あ、帰る前にちょっとお手洗い行ってくるね。待ってて」
「ほいほい、行ってらっしゃーい」
君を待っている間、たまたま他のクラスメイトが全員帰ってたり、席を外していたりして。
教室には、私だけ。
魔が差すにはあまりにもおあつらえ向きの状況。悪魔か、はたまた別のなにかが働きかけたのだろうか。いや、もう悪魔でもなんでもいいや。ありがとう。私にチャンスをくれて。
(....ごめんね)
怖いくらいすんなりと事はうまくいった。特に誰にも見られることなく、見たかったモノを手に入れることに成功。しかもソレには、まだ封はされていない。急いで読み進めていくと....そんな気はしていたけど、当たってほしくなかったなあ。何で私じゃないんだろ。なーんて。自分勝手な感想がつい口から出てしまいそうになるのを、すんでのところでこらえた自分を大いに褒めたい。
【○○くんへ
あなたのことが好きです。直接お話したいので、よければ△△日の放課後午後3時に、正門のところに来て下さい。待っています】
(....やっぱりラブレター、だったかぁ。控えめなあの子らしい書き方。よければ~、なんてさ。相手が来なかったらどうするのよ。全く....3時、か)
さて。
此処に私の筆箱があります。
お揃いで買ったので、あの子が手紙に使った色と同じ色のペンもあります。
更に、あの子と私の文字の癖はそっくりです。
....また悪魔か以下略。のお膳立て?私、自制心を試されてる?だとしたら残念。自制心なんてものは少し前からとっくに壊れてる。だからまた言うわ。
「ありがとう」
後は【3】を【8】に書き換えて。
何食わぬ顔で元の場所に戻すだけ。
そしてあの子が帰ってくるのを待つだけ。ただ、それだけ。
「ごめん!遅くなった!」
「いいよー。それより早く帰ろ。コンビニがーっ、私たちを呼んでいるー、ってね」
「あはは。ほーんと好きだねぇ。お菓子」
「はっはっはーっ、ワタシノカラダハ、オカシデデキテイルノデス」
「ぷっ。あははははっ!」
数日後。
少し落ち込んだ君が、私に話しかけてくる。
私はといえば、親身になって話を聞く振りをして、心の中ではガッツポーズ。
(口元、隠さなきゃ)
ちくりと胸が痛むはずなのに、刺さるはずの棘は何処へやら。
きっと私は、酷い人なんだろう。
奇しくも現在の時間は、午後3時――――
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