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フィンランド
「トナカイのお肉って美味しくないわね」
目の前で眉を寄せてそう嘆くのはナヴァルだ。
ううん、と悩ましげに声を上げたかと思えば一口しか食べてないトナカイの煮込みの皿を私の方へ差し出してきた。
「あげるわ」
「いりません」
「まぁ、好き嫌いは良くないわ。成長期なのに」
「自分の分があります。それでなくても量が多いのに」
自分で注文したトナカイのステーキ、クランベリーソースはなかなかに大きい。味が濃いから白米が欲しくなる。日本の白米は偉大である。
「私、お食事に甘いソースって駄目なのよね」
聞いてない。そんなことは誰も聞いてない。
ナヴァルはどこかずれた女性だ。
食事を終え、一息つき、お店を出ると雪が降っていた。
これからまた寒くなるんだろう。帽子を深くかぶり、溜息をついた。
「雪が深いって聞いたけど、北海道並みね。行ったことある?北海道」
どこまでもどこまでもマイペースなナヴァルは旅行が好きな吸血鬼だ。
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