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基点
私はどこかにいる。記憶のない、言葉のない場所に。
ある特定の時間に含まれてもいる、過去も未来もない時点に。
だから、いつかのあなたは私だ。いつかの私はあなただ。
しかし、今のあなたは私ではない。
あなたは壁に囲まれている。
世界が平和であるように。朝は太陽が昇り、月が夜を美しく照らすように。
波間に漂う止め処ない沈黙と同じくらい至極真っ当に、あなたは未だあなたのまま。
われわれ、つまり存在と存在の合間には、目に見えずとも、やはり何かがある。
空気、光、水、土壌、死。または、霊魂や神、言葉。
それは全ての井戸から下水路を通って、われわれの地下室へとやって来ている。
それは常に流れて込んで来る。
時間が地表を流れ、思念が空を流れるように。
いつの時代も、あまねく意識が、強固な壁を超えている。
気づかぬ間に、暗闇の中で、認識を外れて。
私の地点はあなたの地点でもある。
あなたの内部には、今、私が息づいている。
あなたも、ここではないどこかに向かっている。
断片的に、ひたむきに、うっかりとではあるわけだが。
今、あなたは、わたしたちは、どこにいる?
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