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やはり野上さんたちは冴島さんのことをよくわかっている。ふたりの言っている冴島さんの姿は、決してわたしには見せないものだ。
本当の冴島さんを知りたい。でもその前にわたしなりの覚悟を決めないといけない。
「冴島さんには以前からおつき合いしている方がいらっしゃるんですか?」
もしそうなら、その心づもりで冴島さんと話し合わないといけない。瑠璃さんという女性が本命なら、はっきり言ってもらったほうがきっぱりとあきらめられる。
わたしはジュエリーショップや個人の名前を伏せ、レセプションであったことをかいつまんで説明した。
「冴島につき合ってる女なんて、最近いたっけ?」
コタさんが首を傾げる。
「僕も聞いてないなあ。まあ、そういうことを自分から進んで言うタイプでもないんだけど」
野上さんも心あたりがないらしい。
「秋成さんはここ何年も彼女はいないよ」
「本当?」
話に割り込んできたのはここでアルバイト中の紅葉さん。お盆を持って立っていた。
「秋成さんは二股をかけるような人じゃないよ。ああ見えて女性関係はまじめなの」
紅葉さんが自信満々で言う。そして、わたしに向かってこう続けた。
「彼女なんだよね? そばにいるのになんでわかんないの? 秋成さんをばかにしないで。そんなに疑うんなら、わたしがもらっちゃうよ」
わたしがよほど情けない顔をしていたのだろう。紅葉さんは怒りを滲ませて睨みつけてきた。
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