8.信じる力

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「おふたりとも今日はありがとうございました。勇気を出して冴島さんと話そうと思います」  瑠璃さんの件で、わたし自身も揺らいで仕事でミスをしてしまい、自己嫌悪の塊だった。でも今日ここでみんなから冴島さんの話を聞き、彼が裏切るわけないと強く思えるようになり、仕事も前向きに取り組めそうだ。 「いいんだよ、咲都ちゃん。好きな男なんだから、そりゃあ不安にもなるよな」  コタさんは面倒見がよくて、お兄さんみたいだ。実際に紅葉さんと一緒にいるコタさんはお兄さんみたいだし、わたしのことを気にしてくれるのもそういう感情からなのだろう。 「紅葉ちゃんも言ってたけど、秋成は二股をかけるような男じゃないよ。親しげに見えたとしても秋成が気のない女性と必要以上に距離を縮めることはないと思うんだ。きっとなにか事情があったんだよ」  冴島さんのことを理解している野上さんの言葉だからこそ、すんなりと受け止められる。その場しのぎの言葉じゃない。野上さんは、冴島さんを心から信頼している。  ふたりに相談してよかった。こんなにも清々しくて、こんなにもポジティブになれる。  もし万が一わたしがフラれることになったら──。考えるだけで怖い。だけど、せめて好きになったことは後悔しないようにしたい。
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