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社長室の生け込みが終わると、次は役員会議室。ところがドアの前まで来たものの、固まってしまった。
というのは、部屋のなかから声がするのだ。色っぽい女性の声と少しくぐもった若い男性の声。
おかしいな。小山田さんの話だと、役員会議室の予約は入っていないはずなのに。
役員会議室に入る場合、役員、部長クラス、秘書の方々は各々のICカードを使う。ちなみに一般社員のICカードでは入れないそうだ。わたしの場合は毎回、小山田さんから業者用のICカードを借りている。
やっぱり小山田さんに確認してこよう。そう思った矢先、また声が聞こえてきた。
「大丈夫、誰も来ないわよ。午後はこの会議室、予約が入ってないの」
「ちょっと瑠璃……」
瑠璃さん? なんで彼女がこの会社にいるの?
別人かとも思ったが、この声には聞き覚えがあった。
「ねえ、お願い。身体の相性が一番いいのはやっぱりあなたなんだもん」
艶めかしい声。聞けば聞くほど瑠璃さんだ。でも男性のほうは誰なのだろう。
ここは役員会議室。通常、限られた人しか使用しないはず。現にこれまでこのフロアですれ違ったのは重役の方と秘書室の方のみ。
ということは、冴島さんの可能性が高いのだが……。
まさか! 本当に瑠璃さんと男女の仲なの!?
心臓が音を立てて激しく鼓動している。あの日見た光景がフラッシュバックした。
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