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このドアの向こうに冴島さんと瑠璃さんがいる。ふたりの絡み合うビジョンが頭のなかに映し出された。
これが夢ならどんなにいいか。いや、これは夢なんだ。もしくは、きっとなにかの間違い、そうに違いない。わたしは自分を保つために、必死にそう思い込もうとした。
けれどすぐに限界がくる。息苦しさは増すばかり。胸の痛みが強くなっていった。
すると背後に気配を感じ、かと思ったら目の前のドアがすごい勢いで開かれた。
ええっ!?
意に反して目に飛び込んできた光景は、テーブルの上で一組の男女がまさに絡み合っているシーン。
やだやだ見たくない! 覚悟なんて役に立たない。こんな事実ならやっぱり知らなくていい!
わたしはとっさにぎゅっと目を閉じた。
「おまえら、いい加減にしろ! 人の会社でなにしてんだよ、野上!」
野上さん?
予想だにしなかった名前が出てきて、口があんぐりとなる。
しかもこの声は……。
「ごめんね、春名さん。不快なものを見せちゃって」
そう言いながら、わたしの隣で苦々しい顔をしているのは冴島さん。そしてテーブルに押し倒されているのが野上さんだった。
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