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「春名さん、大丈夫?」
「ええ、なんとか」
びっくりしたあ。役員会議室にいたのは野上さんだったのか。
「あ、あの……聞いてもよろしいでしょうか? あの女性は……」
冴島さんに恐る恐る声をかける。でもなんて聞けばいいのだろう。
彼女は間違いなく瑠璃さんだ。だけど、どうして彼女がここにいるのか、さっぱり理解できない。
言葉に詰まっていると、冴島さんがわたしの知りたかった情報を答えてくれた。
「彼女はうちの社員なんだよ。企画販売部の部長で、野上の担当をしてる」
わたしたちを見て起き上がったふたりだが、野上さんはひどく慌てた様子だった。一方、瑠璃さんは余裕の態度で笑みすら浮かべている。
近くで見ると、瑠璃さんの瞳はヘーゼル色をしている。レセプションのときも思ったが、日本人離れした顔立ちだから、ハーフやクウォーターなのかもしれない。
「野上、まだ瑠璃と続いていたのかよ?」
冴島さんはまったく動じず、軽い口ぶりだ。
「違うよ、これは事故なんだ」
ゆるめたネクタイを締め直しながら野上さんが言う。
でもあんな場面を見てしまったため、事故と言われてもなんの説得力もない。
だって瑠璃さんのブラウスが大きくはだけていて、ブラが丸見えだ。第一、ふたりは唇を重ねていた。一瞬だったけれど、間違いなくあれはキスだ。
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