9.心の奥で触れ合って

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「野上の女性関係に口を出すつもりはないけどさ、うちの会社ではやめてくれ」 「それは瑠璃に言ってくれよ。僕は無理やり彼女に押し倒されたんだよ」 「嫌なら本気で抵抗しろよ、男なんだからさ。ていうか、おまえも相変わらずだなあ。女なら誰でもいいのかよ?」 「誰でもいいわけないだろう」 「野上が言っても説得力ゼロだな」  あのまじめそうな野上さんが実は女たらしなの? 「社長ったら、随分と失礼なことをおっしゃるのね。女なら誰でもいい? そんなわけないでしょう。このわたしだからよ」  瑠璃さんがドヤ顔で言う。  冴島さんはやれやれといった顔をしていた。 「君のその自信はいったいどこからくるのかね。いまだにわからないよ」 「自信もなにもそれが事実よ。男はみんなわたしの虜になるの。次々に口説いてくる男をさばくのが大変なくらい」 「なにを言ってるんだか」  とうとう冴島さんがあきれ果てたようにため息をついた。 「社長だって、わたしが本気になったら秒殺されるわよ」 「されないね」  即答だった。 「社長はわたしの価値をわからないの?」 「わかってるよ。だから君をこの会社に引っ張ってきたんだろう。高い能力があるのに、この世に自分になびかない男がいることを、なんでわからないかな?」 「これまでそんな男がいなかったからよ。この美貌に惹かれない男がいたら、それはクズ以下よ」  瑠璃さんは赤い唇を舌なめずりする。
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