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午前中、冴島さんを含め、三人であの役員会議室で打ち合わせをしていたそうだ。しかし冴島さんだけがほかの予定が入っていて途中退席し、最終的にあんなことに……。
「瑠璃さんっておきれいな方ですね。ハーフなんですか?」
「クウォーターだよ。母親が日本人とドイツ人のハーフで、有名なモデルだったらしいよ。子どもの頃はフランスとイタリアに住んでたって言ってたな」
「国際的な方なんですね」
「でも性格があんな感じだろう。最初は僕も驚いたよ。だけどあれで仕事はかなりできるんだ。色気を売りにしてるけど、そんじょそこらの男より男らしくて、柔道は黒帯で合気道も習ってたらしいよ」
柔道に合気道か。それなら野上さんが押し倒されていたのも、なんとか頷ける。
「性格は少々難ありだとしても手もとに置いておきたい逸材なんだ」
「冴島さんが認めるほどすごい方なんですね」
「けっこうヘッドハンティングもあるらしいんだ。実は恒松社長も瑠璃を狙っていてね」
「恒松社長も?」
「彼、頭が切れるだけじゃなく、提示する契約金も半端じゃないから、ほんと困るんだよ」
冴島さんは鯖味噌を口に運び、軽い口調で言う。
「参るよなあ。せっかく苦労して僕がうちの会社に引っ張ってきたのに」
つまり冴島さんが自らヘッドハンティングしたということか。
そこまで聞かされるとさすがに妬けてくる。彼女は冴島さんに認められた人。おまけにきれい。そんな人は、きっとほんの一握りだ。
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