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「レセプションの日、冴島さんと瑠璃さんをお見かけしました。あと恒松社長も。あれはそういうことだったんですね」
「そうなんだよ。レセプションに瑠璃が出席していることを小山田さんが知らせてくれたんだ」
それで慌てて駆けつけたということだった。
小山田さんの情報網は社内一らしく、どこから入手してきたのか、その情報を出先の冴島さんにいち早く伝えてきたそうだ。
「春名さんも近くにいたなら声をかけてくれればよかったのに」
「あまりにもおふたりがお似合いだったので」
「ふたりって、僕と瑠璃?」
「はい、それで勘違いしてしまいました。冴島さんが、恒松社長から強引に瑠璃さんを引き離すのを見て、てっきりおふたりが深い関係だと思ってしまったんです。瑠璃さんが冴島さんの本命なのかもしれないと……」
「そうだったんだ……」
冴島さんはそう言ったきり、黙り込んでしまった。
どうしたのだろう。今の話が冴島さんの気に障ってしまったのだろうか。
「失礼なことを言ってしまったのなら謝ります。ごめんなさい。でもそんなふうに思っていた自分が間違っていることに、あとから気づいたんです」
わたしは野上さんとコタさんに相談して励まされたことを話した。それでも冴島さんの表情が沈んでいく。
「僕も気をつけるよ。誤解とはいえ、嫌な思いをさせちゃってごめん」
「謝らないでください。わたしがすぐに冴島さんに確認すればよかったんです」
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