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冴島さんがおもむろに箸を置く。よく見ると、すでに定食を食べ終わっていた。わたしときたら半分以上残っている。
「す、すみません。急いで食べますね」
完全にキャパオーバー。わたしはとっさに話題を変えてしまった。
「ゆっくりでいいよ」
冴島さんは気にする様子もなく微笑んでくれた。
箸を持つ手が震えそうだ。彼の視線から逃れるように冷めたお味噌汁をすすった。
「今夜、会える?」
えっ、急にそんなこと……。うれしいけれど、できればお味噌汁をすすっているときに言わないでほしかった。
お味噌汁を飲み込んで、「はい」と返事をする。
今日は残業の予定だったけれど、残った仕事は明日の開店前にやればいい。ようやく会えるんだ。このチャンスを逃したくない。
わたしは視線を合わせる。
「うれしいです、会えるの」
「僕も」
甘い声で即答されて、その余裕にやっぱり負けたと思いながら目を伏せた。
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