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「僕も力になるよ。お父さんのお店、がんばって守っていこうね」
冴島さんのやさしい声が胸に響いてくる。
「はい、がんばります。こんなふうに支えてもらっているわたしは幸せ者です」
店を潰すものかと毎日朝から晩までがむしゃらに働いて、家に帰ってからも花の勉強をして、ひとりでがんばっているつもりでいた。けれどそれは傲慢な考えだった。
わたしはたくさんの人に支えてもらっている。平栗さんをはじめとする商店街の人たちがいつも見守ってくれていたのだ。
「すみませんでした。あんな醜態を見せてしまって」
定食屋の帰り、商店街を歩きながら冴島さんに謝ると、彼が無言のままわたしの手を掴み、ぎゅっと握ってきた。
「ひ、昼間ですよ!」
だけど離したくないので、わたしも握り返す。
「たまにはいいじゃない? あっ、でも手をつなぐのは初めてか」
「そうですね、初めてですね」
「つないでよかった?」
「いちいち聞かないでください。わかってるくせに……」
「ちょっと意地悪だったね。困ってる顔も見たくてつい。だって可愛いから、咲都」
ここまで言われると開き直るしかない。それに冴島さんはこんなふうにからかいながら、わたしを一歩ずつ近づけさせてくれているんだ。
遠慮しないで。不安にならないで。そんな想いをつながれているこの手から感じる。力強いのにやさしく包み込んでくれる。
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