4.思いもよらない告白に

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 月曜日の午前中は冴島WESTビルのエントランスホールでの生け込みの日。  幸いなこと(?)に冴島社長に偶然会うことはなく、仕事を終えて店に戻ってきた。  すぐに塔子さんが奥の事務所で昼休憩に入る。しばらくすると、いつもお世話になっている平栗(ひらぐり)さんがやって来た。 「やあ、咲都ちゃん。調子はどうだい?」 「ええ、なんとかやってます」 「そうか、それはよかった。あっ、いつものを頼むよ」 「はい、かしこまりました」  平栗さんは腕利きの革製品職人。商店街でオーダーメイドの革製品専門店を経営している。小さい店だけれど、平栗さんの作るものは高い品質を誇り、向こう半年は予約待ちのほどの人気だ。  そして彼は父の高校時代からの友人でもある。そのため父が亡くなってからも、うちの店をとても気にかけてくれて、商店街にあるお肉屋さんのタイムセール情報を教えてくれたり、「頂きものなんだけど食べきれそうになくて」と果物や地方の銘菓をおすそわけしてくれたりする。  今日はいつものように、神棚に供える(さかき)を買いにきてくれた。 「今日もコーヒーを飲んできたんですか?」 「ああ、ナポリタンも一緒にね。なんだか急に食べたくなってね」  平栗さんは近くの喫茶店で出しているブレンドコーヒーが大好きで、その帰りにたまにうちの店に寄ってくれる。
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