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午前3時の銀河鉄道
「僕と一緒に逃げよう」
僕が君にそう声をかけたのは、僕が僕から逃げ出したかったからかもしれない。
午前3時には、真っ暗闇の夜が一瞬だけ、まるで昼間のように輝く瞬間があるんだ。
「知ってる?」
僕が君にそう尋ねると、君は首を横に振った。
「じゃあ、一緒に見に行こう」
そうして僕らは夜の扉を開けた。君は僕の自転車の荷台に乗り、僕はタイヤの空気が減りやたらと重くなったペダルを無心でこいだ。
人がひとりも見当たらない商店街は、シャッターばかりが並び、まるで牢屋みたいだった。ギシギシと軋む自転車の音がアーケードに反響する。僕らはふたりで河川敷を目指した。
僕にとっては見慣れた川面の煌き。君にとっては初めて見る川面の煌き。僕らは除草されずに残った草の上に腰を下ろし、背伸びして買ったブラックの缶コーヒーを飲んだ。濡れてもいない草の上は、なぜだか少しひんやりした。
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