咲遅れた厨二病?

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――― ピッピッピッ。 規則的になる音。 薄っすらとした白い光。 重い瞼を開けた瞬間、強い光が眼を突き刺す。 …‼︎ 体中がギシギシと軋む。鉛の様に重い。 (動…け…ない) ―――ピンポーンピンポーンピンポーン 鳴り響く耳障りな音。 パタパタと羽の様な軽やかな音が遠くから聞こえてきた。 「馳目(はせめ)さん。ここどこだかわかりますか?」 再びゆっくりと眼を開けた。 …大きな瞳の天使? 俺は点滴とカテーテルに繋がれている。 ここでふと現実に引き戻された。 全身の強張るような痛みに思わず声を上げそうになった。 …しかも俺の大事な息子まで繋がれてるじゃないか! 「びょ…いん?」 呂律も回らない。 「そう。交通事故で運ばれたの。血圧測るね」 看護師がボタンを押すと、うなる様な低い音が響き、腕が締め付けられた。 「今日は何月何日かわかる?」 一瞬目にライトを照らされると、ぐるぐると天井が回った。 「あ...7月…1日…かな」 思わず眼をかたく瞑った。 「…3日間寝たままだったの。だから今日は4日」 …そんなに寝てたんだ。俺。 「…先が痛い…んですけど?」 恥ずかしかったが、先ほどからむずがる息子を指さした。 「あ…おしっこの管ね。ちょっと待ってね」 …あれ?なんかオカシイ。 部屋を去っていく看護師の後姿。 彼女の周りに、摺りガラスの様なモヤモヤとしたものが見えた。 …まるで頭から湯気が出ているみたいだ。 パタパタと数人の看護師が部屋にやってきた。そして全ての看護師の頭上には皆、サイズは違えど同じ様にモヤモヤとしたものが見えた。 …誰だっけか…戦国武将でこんな兜被ってた。それはまるで後光のように頭の上で放射状に広がっていた。 天使もコスプレする時代なの? 俺絶賛混乱中。 その“物体に”目を凝らそうとするたびに、木槌で容赦なく頭をと叩かれてる様な頭痛に襲われた。 …がっああああ。マジ痛ぇ‼︎ ーーーピンポーン ピンポーン ピンポーン。 頭上の機械が再びけたたましく鳴り出した。 その金属音と劇的頭痛がフュージョンしたかと思うと、ぐるぐると天井が廻り出した。 俺の体力ゲージ…著しく低下。 「止めてくれぇぇ…ぇぇ…」 …神様…死ぬのは良いけど、痛いの勘弁…して。 再び気を失った。
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