拗れ散らかす俺

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俺はその足でセナの家に向かった。 ――― ピンポーン。 玄関のチャイムを押した。 (はい) セナの声だ。 「馳目です。話があるんだ」 「…ちょっと待ってね」 セナはすぐに玄関先に出て来た。 …俺は、守ってやるとは言えない。 バッグの中をゴソゴソと探った。 「突然ゴメン。だけど…渡したいものがあって。」 俺がそれを手渡すと、セナはきょとんとした顔をした。 「これ、いつも必ず忘れずに持って行って。それから何度も言うようだけど、煮雪には絶対近づいちゃ駄目だ」 セナはスタンガンを受け取ると、何も言わず俺をじっと見つめた。 「判った」 俺が出来るのはこれぐらいだ。 「じゃぁ…。」 俺はその足でユカの所にも行く予定だった。 「佑くん…。」 セナに呼び止められ、俺は振り返った。 「1年生の子と…付き合ってるの?」 「ううん。付き合って無い。一緒に帰ってただけ…それじゃぁ。」 俺はユカの家へと向かった。 「あら佑ちゃん珍しわね。どうぞ。今ユカを呼ぶわ」 おばさんはすぐに俺を入れてくれた。 「どうしたの?」 ユカがすぐに来て俺を見て驚いた。 「ちょっと話があるんだ。」 俺はユカの部屋へとお邪魔した。ユカのおばさんが、おせんべいとお茶を運んできてくれた。おばさんが部屋を出てから俺は話し出した。 「あの可愛いアキちゃんのことで相談?」 ユカが笑った。 「付き合ってないし。」 ユカの部屋は、アイドルのポスターや、好きなキャラクターなどの縫いぐるみで、これぞ女の子!という印象を受けた。 俺はたったひとつの事だけを確認に来たのだ。 「えっ…。」 「…やっぱり俺、セナがまだ好きだから。女々しいと思われても、やっぱり好きだ。」 ユカはそんな俺をせんべいを食べながら笑った。 「佑くんは相変わらずだね。」 どうやらユカは、もう援交はしていないようだった。 「お前…もう援交なんてするな。自分の身体を大切にしろ。俺はわかる。お前があの大学生の彼氏の事本当に好きだったこと。」 ユカの顔から笑顔が消えた。 「わざわざそんなことを言いに来たの?」 ユカは俺をじっと見つめていた。 「俺…セナにずっと黙ってたんだ。病院へ行った日のこと…他の誰かに知られるのは嫌かも知れないけど…でもセナに誤解されたままのは嫌だ。だから、あの日のこと…。」 「そっか…わかった。」 ベッドに腰かけて、足をぶらぶらしながらユカが笑った。 もしもユカが良いと言ってくれるのなら、セナともう一度ちゃんと話そうと思った。 「あーあ。佑ってさ…やっぱり真面目だよね。」 ユカは、大きな縫いぐるみを抱えてベッドにころんと横になった。 「あたしさ…佑を来栖さんに取られちゃったような気持になってたの。だって佑は、あたしのことずーっと好きでいてくれたじゃない?」 「た…確かに…そうだけど…それを自分で言うか?普通…。」 俺は、ユカのあっけらかんとした性格というか、自分の気持ちに正直なところも好きだったし、これはこいつの長所だと思ってた。 「だって…ホントのことでしょう?」 人をからかって楽しそうにするところは、ちょっとSっぽいけど。 「そうだったけど」 「嫉妬してた…のかも。うん。来栖さんに嫉妬してた」 …えっ。 「来栖さんのこと大切にしていたの判ったし、佑がとっても好きだってことも…あたしは、そんな風に彼氏に思われた事無いから。羨ましかったの…かも?」 「な…なんだよ…それ。お前の方がモテてたじゃん」 「一生懸命好きになったことはあったけど、一生懸命好きになられたことは無いから…佑と来栖さんを見てて羨ましかった」 「相手の気持ちを変えることは出来ないけど、好きでたまらない気持ちだけが確かなことだから、意地を張らないで正直になろうと思ったんだ。自分より誰かのことが好きって、面倒だけどさ」 …そうだ。あの時に、面倒臭がらずにちゃんと言えば良かったんだ。信じて貰えるように。最大の努力をしてなかった。 「佑が来栖さんのことを大好きなことがよーく判った。だから…キスしてくれたら病院のこと言って良いよ」 ユカはいきなり俺に抱き付いてきた。 「わっ…ちょっと」 テーブルの横に押したされて慌てた俺の足がテーブルに当たり、お茶が零れた。 「うわっ!熱っ」 足にお茶が掛かり飛び起きた。 「ユカ…お前…火傷しなかったか?」 ユカを見ると濡れていないのでホッとした。 「お前何やってんだよ。熱っちいじゃねーか。馬鹿」 ユカと対面座位。 慌てて押しのけ、傍のティッシュをとって慌てて自分のズボンを拭いた。 「…無理だ。お前とは出来ない。ゴメン。」 倒れた湯飲みを元に戻しながら、目の前にあるユカの顔を見て俺は言った。ユカが少し微笑んで、再び俺に抱き付いてきた。 「うああ…ちょっと。待て…早まるな!」 「じゃぁ…暫くこうしててくれる?そしたら諦めるから。」 ユカの髪からはバラの香りがふわりと漂い、押し付けられた胸はセナよりもだいぶ大きかった。 …これは…マズイ。 「ねぇ…さっきからあたしのお腹に硬いのが当たってるんだけど?勃っちゃった?」 ユカが笑った。 「あーっと…これは仕様…だ。どうすることも出来…ぐえっ。」 ユカは俺の首に腕を回し、再びしっかりと抱き付いた。
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