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岡田俊行は梅本尚史宅(?)前で猛山洋児と別れた後、行きに使った道をそのまま戻り帰宅の途についていた。行きのようにラジオを流してノリノリと言う気分にはなれない。何も考えずに道を流している内に自分の暮らす晴日市に辿りついている事に気がついた。それと同時にスマートフォンに着信が入っている。ディスプレイには参道求とあった。すぐさまに路肩に車を停めて電話に出た。
「はい」
「おう、ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」
「何だよ」
「今日から林河区の勤務だったよね? ってことはニュースでやってたウチの高校で見つかった死体の件に関わってる? 別の事件担当だったらこの電話すぐに切らせてもらうけど…… もしそうなら時間取らせてごめんね」
「まさにその桃花仁高校の事件担当だよ」
「ああ……」
参道求は嘆くような声を出した。
「ひょっとして、僕の知り合いって人間に何人か会ってたりする?」
岡田俊行は今日会った桃花仁高校の関係者の名前を一人ひとり挙げていった。猛山洋児、渡部礼、伊東博雪、内東滝矢、そして、被害者と思しき梅本尚史の名を言った。
「はーあ」
参道求は心からうんざりしたような声を出した。
「どうしたよ」
「黒歴史って知ってる?」
「触れられたくない過去のことだろ?」
「それの語源は?」
「知らない」
「うちらが高校生の時にやってたロボットアニメのネタだよ、イチから語りたいところだけど通話料が10万円ぐらいになりそうだからやめとく」
アニメオタクらしい発言である。岡田俊行は軽く呆れた。
「で、何が言いたいんだよ」
「黒歴史と向き合わなきゃ行けない時期が来たって事か…… そのロボットアニメでも黒歴史と向き合う事になった結果が戦いだったからな」
それだけ言って参道求は電話を切った。岡田俊行はカーナビの行き先を自分のマンションから参道求の家に切り替えた。
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