Chapter-15

1/1
前へ
/23ページ
次へ

Chapter-15

ラオンと会った次の日から、工藤は学校へ来なくなった。 いつも朝に待ち合わせしている時間に来なかったので、先に行くね、と連絡して学校へ向かった麗秀は、工藤の事を聞いて両目を丸くする。 なんでも担任の先生が聞いた話では、工藤は大怪我(おおけが)をしたらしく、しばらく休むと連絡があったらしい。 ……大怪我って、事故にでもあったのかな。 その夜に、心配になった麗秀(れいしゅう)は工藤のスマートフォンへLINEを送る。 ――こんばんは。 ――ケガしたって先生から聞いたよ。 ――大丈夫? ――結構休んでるから、酷いケガなんでしょう? 送ったメッセージには、数時間後に既読がつき、返事が来ていた。 お風呂上がりの麗秀は、焦る必要もないのに、急いでスマートフォンを確認する。 ――大丈夫。 ――大したことないよ。 工藤からの返信はそれだけだった。 麗秀もそれ以上何を送ればいいか分からず、ベットで横になりながら、スマートフォンを見つめている。 そのときの顔は、駐車場にいる猫がしかめっ面をしてるようだった。 ……ホントに大丈夫かな。 文章が淡泊(たんぱく)過ぎて、気を使っているのか、本当なのかわからないよぉ……。 工藤は、元々用事がないと連絡をしてこないタイプ。 もちろん麗秀は、そのことを知っていた。 だがしかし――。 ……私。 工藤くんのこと、気になってる……。 こんなこと、今まで一度だってなかったのに……。 でも、なかったのに、って……それでどうすればいいんだよ。 こんなの普通じゃない……。 こんなの全然普通じゃないよぉ……。 ――次の日。 朝、学校に向かうために、麗秀は一人で通学路を歩いていた。 いつも見ている景色や、日差しの中で吹いてくる風。 ここ数日間だったが、この通りを工藤と歩いていることを思い出す。 ……よく考えたら、いつも会話らしい会話してなかったなぁ。 私も工藤くんも黙ったまま、歩くだけだったっけ。 もう少しコミュニケーションとったりしていれば、あの淡泊な文章から工藤くんの気持ちがわかったのかなぁ。 学校が近づいてきたせいか、他の生徒たちの姿が見えてきていた。 だが麗秀は、周りのことなど目に入らず、ため息をつく。 私にもっと(さっ)する力があればよかったのに……。 そこだけは、父さんに似てほしかったなぁ。 そして見上げると、太陽の周りに大きな雲が集まり始めている。 青かった空が、次第に灰色へ変わっていく。 ……雨でも降りそう。 麗秀は、ボケっとした顔をしてそのまま空を見ていた。 「おっはよー!」 麗秀が振り向くと、見慣れた二人が、手を振って近寄って来る。 亜美と(あんず)だ。 「おはようございます、麗秀(レイ)ちゃん」 「ちょっと麗秀(レイ)、どうした? いつも以上にボーとしてさ」 「はは、なんでもないよ」 麗秀は、二人に気がつくと、素っ気ない笑顔で謝った。 そしてまたボーと歩き出す麗秀。 亜美と杏は顔を合わせて、そんな麗秀を不思議そうに見ていた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加