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Chapter-15
ラオンと会った次の日から、工藤は学校へ来なくなった。
いつも朝に待ち合わせしている時間に来なかったので、先に行くね、と連絡して学校へ向かった麗秀は、工藤の事を聞いて両目を丸くする。
なんでも担任の先生が聞いた話では、工藤は大怪我をしたらしく、しばらく休むと連絡があったらしい。
……大怪我って、事故にでもあったのかな。
その夜に、心配になった麗秀は工藤のスマートフォンへLINEを送る。
――こんばんは。
――ケガしたって先生から聞いたよ。
――大丈夫?
――結構休んでるから、酷いケガなんでしょう?
送ったメッセージには、数時間後に既読がつき、返事が来ていた。
お風呂上がりの麗秀は、焦る必要もないのに、急いでスマートフォンを確認する。
――大丈夫。
――大したことないよ。
工藤からの返信はそれだけだった。
麗秀もそれ以上何を送ればいいか分からず、ベットで横になりながら、スマートフォンを見つめている。
そのときの顔は、駐車場にいる猫がしかめっ面をしてるようだった。
……ホントに大丈夫かな。
文章が淡泊過ぎて、気を使っているのか、本当なのかわからないよぉ……。
工藤は、元々用事がないと連絡をしてこないタイプ。
もちろん麗秀は、そのことを知っていた。
だがしかし――。
……私。
工藤くんのこと、気になってる……。
こんなこと、今まで一度だってなかったのに……。
でも、なかったのに、って……それでどうすればいいんだよ。
こんなの普通じゃない……。
こんなの全然普通じゃないよぉ……。
――次の日。
朝、学校に向かうために、麗秀は一人で通学路を歩いていた。
いつも見ている景色や、日差しの中で吹いてくる風。
ここ数日間だったが、この通りを工藤と歩いていることを思い出す。
……よく考えたら、いつも会話らしい会話してなかったなぁ。
私も工藤くんも黙ったまま、歩くだけだったっけ。
もう少しコミュニケーションとったりしていれば、あの淡泊な文章から工藤くんの気持ちがわかったのかなぁ。
学校が近づいてきたせいか、他の生徒たちの姿が見えてきていた。
だが麗秀は、周りのことなど目に入らず、ため息をつく。
私にもっと察する力があればよかったのに……。
そこだけは、父さんに似てほしかったなぁ。
そして見上げると、太陽の周りに大きな雲が集まり始めている。
青かった空が、次第に灰色へ変わっていく。
……雨でも降りそう。
麗秀は、ボケっとした顔をしてそのまま空を見ていた。
「おっはよー!」
麗秀が振り向くと、見慣れた二人が、手を振って近寄って来る。
亜美と杏だ。
「おはようございます、麗秀ちゃん」
「ちょっと麗秀、どうした? いつも以上にボーとしてさ」
「はは、なんでもないよ」
麗秀は、二人に気がつくと、素っ気ない笑顔で謝った。
そしてまたボーと歩き出す麗秀。
亜美と杏は顔を合わせて、そんな麗秀を不思議そうに見ていた。
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