Chapter-17

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Chapter-17

それから麗秀(れいしゅう)は、父親の九能に連絡した。 雨の中、スマートフォンを耳に当て走りながら待つ。 だが、いくら待っても空しく電子音が流れるだけだった。 (あきら)めた麗秀は、次に沁慰(シンイー)に電話をする。 「は~い、どうしたの麗秀(レイ)?」 沁慰は、麗秀を待たすことなく出た。 「お、叔母さん……」 弱々しく、今にも消えそうに返事をする麗秀。 声を聞いただけで、泣いているのがわかる。 沁慰は何も聞かずに、すぐに迎えに行くから自宅のマンションか、居るところがわかる場所にいるように伝えた。 その言い方はとても優しく、まるで聖母のようだった。 麗秀は、自宅で待っていることを伝えると電話を切った。 電話を受け取った沁慰は、池袋の事務所にいた。 すぐに出発しようとすると、周りにいた中国人たちが慌てて止めて来る。 中国人たちの様子を見るに、どうもこれから大事な会議があるようだった。 「どきなさい。姪が泣いてるの」 沁慰がそう言うと、傍にいた髪の長い中性的な風貌(ふうぼう)した二人の男が前に出る。 二人が中国人たちの前に出ると、沁慰はその間に事務所を出て、愛車であるオールテレンブルーのハマーH2に乗り込んだ。 ……麗秀(レイ)。 あの子があんなになって電話してくるなんて……。 何があったの……。 マンションに着いた沁慰は、スマートフォンで連絡を入れて麗秀の家に入る。 扉を開けると、玄関の目の前で壁に寄りかかり、体育座りをしたずぶ濡れの麗秀の姿があった。 「お、叔母さん……」 顔を上げて、また涙を流す麗秀。 沁慰は、そのままでは風邪をひいてしまうと言い、浴室に麗秀を連れて行った。 「まずはシャワー浴びなさい。それで少しは落ち着けるでしょ」 「で、でも叔母さん……」 「話はそれから!」 沁慰は、両手を組んで力強く言うと、麗秀の着ている制服を脱がして浴室の扉を閉めた。 それからベランダへ行って、ジャケットのポケットからとアークロイヤルのバニラフレーバーを取り出し、火をつけて紫煙(しえん)を吐き出す。 ……あの子。 相当、参っちゃってるわね。 沁慰がそう思っていると、いつの間にか麗秀が後ろにいた。 その姿は、髪も濡れたままで、何も身に着けていない裸のままだった。 「もっとゆっくり浴びなさい。それにどうしてなにも着てないのよ」 (あき)れている沁慰の口から、ため息と煙が一緒に吐き出される。 タバコを消し、それを携帯灰皿に入れ、また麗秀を連れて浴室に戻っていった。 まずバスタオルで体を()き、適当にそこらにあった服を着せる。 それからドライヤーで髪を乾かす。 麗秀は、まるで人形のようにされるがままだ。 「ごめんね……」 「何がよ」 「急に呼んじゃって……」 沁慰は、乾いた髪を(クシ)()かしながら、ため息をついて言う。 「ホントよ、もう。でも……麗秀(レイ)が私をこんなふうに頼ってくれたのって初めてじゃない? だからちょっと嬉しいかな~」 楽し気にいう沁慰の声を聞いて、麗秀はようやく安堵(あんど)の表情を見せる。 そして、いつの間にかもう涙も止まっていた。 「それでね、叔母さん……」 落ち着いた麗秀は、静かに話を始めた。
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