Chapter-2

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Chapter-2

……ジリリリリリリリ! けたたましい音で目覚めた麗秀(れいしゅう)。 さっとベットから体を起こす。 部屋には、プラスチック製のタンス、ベットと本棚、そして小さなテーブル以外は何もない。 部屋にあるものは、すべて白で統一されていて、まるで病院の一室。 せめてこの部屋に、可愛い動物のぬいぐるみや、カラフルなベットシーツ、カーテン、クッションなどがあれば十代の女の子らしい部屋に見えただろう。 だが麗秀は、そんなものに興味はなかった。 麗秀は部屋から出て、浴室に向かう。 彼女の朝はシャワーを浴びないと始まらないのだ。 シャワーを浴びを終わった麗秀は、髪を乾かすとキッチンへ行き、いつも使っている飾り気のない容器を手に取る。 そしてシリアルコーンフレークと牛乳を注ぎ、それを素早く食べ、歯を磨いてから学校の制服に着替えると、すぐにマンションを出た。 外に出ると、初夏の気持ちのよい日差しと、柔らかな風が麗秀を(むか)える。 麗秀は太陽や風、他にも海や山などの自然が好きだった。 将来は、誰もいない大自然に住みたいと思うくらいに。 「おっはよー!」 麗秀が振り向くと、見慣れた二人が、手を振って近寄って来る。 「おはようございます、麗秀(レイ)ちゃん」 「ちょっと麗秀(レイ)!! こっち気づけよ!!! まったくボーとしやがって」 一人は上品に笑みを浮かべ、そしてもう一人は大きく口を開いて微笑んでいる。 丁寧(ていねい)に頭を下げてお辞儀(じぎ)をしている大人しそうな子は、岡本杏(おかもとあんず)。 セミロングヘアで小動物を思わせる彼女は、麗秀が昭和代(しょうわだい)高等学校に入学してから仲良くなったクラスメイト――。 そして朝から憎まれ愚痴(ぐち)を叩いているショートカットの子、桂亜美(かつらあみ)も、杏と同じく入学してから仲良くなったクラスメイトで、二人は小学校から仲の良い幼馴染だ。 「ごめん、気がつかなかった」 麗秀が謝ると、そのまま三人で並んで通学路を進んでいった。 「そういえば(こく)ってきた奴には、もう返事したの?」 亜美が麗秀に訊くと、横で杏が驚いた顔をして声を出す。 「えっ!? 麗秀(レイ)ちゃん告白されたの!?」 「う、うん。なんか下駄箱に手紙が入っていて……」 麗秀は、二人にその話を断ったことを説明した。 他人と一緒にいることに苦痛を感じるような人間が、誰かと付き合うなんて考えられない。 でも恋をすれば、それすら越えていけるのだろうか? 麗秀は、口を動かしながら内心そう思った。 「へぇ、(うらや)ましいねぇ」 亜美は呑気(のんき)な顔つきで、体を伸ばしながら言った。 その横で杏は、モジモジしながら小さい声で(つぶや)く。 「いいなぁ。私も一度は告白されてみたいなぁ……」 「おっ?」 亜美はニヤニヤしながら杏に近づいていく。 「なんだよぉ、杏もモテモテになりたいのかよぉ」 「べ……別にモテたいわけじゃ……」 「そんな不純(ふじゅん)なことを考える子にはっ!!!」 亜美が杏をくすぐり始めると、身をよじって嫌そうに笑った。 「や、やっ!、ちょっと! やめてよ亜美っ!! きゃははは」 「男にモテようなんて許さん! 杏はあたしのものだ!!」 いつもの二人。 麗秀はそれを笑顔で見つめていた。 だが、それは心から出る笑みではなかった。 羨ましいと考えながらも、自分が杏の立場になったらと思うと耐えられない。 亜美のようにああやってからかうのも、加減がわからず、相手を本気で怒らしてしまいそうだ。 内心思う麗秀。 彼女は、他人といる時いつも笑顔だった。 その方が普通だと思っていたからだ。 ただ本人が望んでいないのに、ふとした時に出るとても退屈そうな顔が意外にも男子に人気があった。 「麗秀(レイ)ちゃん助けて~!!」 「ふふ、無駄だぞ杏!! 麗秀(レイ)はあたしの味方だ!!!」 じゃれ合う二人と共に、麗秀は作り笑顔で学校に向かった。
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