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Chapter-5
詰め寄られた麗秀の動きは、さらに強張る。
だが、その時――。
スーツ姿の男たちがブロンドの女性に声をかけた。
「お前、何しに来た? 組織を抜けたんただろうが」
「あん? なんだお前ら? あたしは姉御に呼ばれたから来たんだよ」
その高圧的な態度に、ブロンドの女性は薄気味悪い笑みを浮かべている。
だが、その目には虚無が満ちていた。
けして笑っていない目。
麗秀の目の前で、睨みあうブロンドの女性とスーツ姿の男たち。
……ひぃぃ!!
沁慰叔母さんなんとかして!!
緊迫した空気の中、麗秀は笑顔のままだったが、内心で泣き叫んでいた。
――パンパン!
手を叩く音が聞こえると、ブロンドの女性とスーツ姿の男たちが、音のする方を見た。
「私の許可なくケンカはダメよ。それとレリアはお客さんなんだから」
沁慰の一言で、スーツ姿の男たちは頭を下げて、その場から散っていった。
「あぁレリア、私のレリア!!」
麗秀と出会った時と同じように抱きつき、頬をブロンドの女性の顔に擦りつける沁慰。
レリアと呼ばれたブロンドの女性はすぐに自分の体から、沁慰を引きはがした。
「暑苦しいんだよ」
「もう、久しぶりなんだからいいじゃない」
怪訝な顔のレリアと、嬉しそうな沁慰。
どうやら二人は、しばらく会っていなかったようだ。
だが、沁慰の顔から突然、笑みが消えた。
「靖子のことは……残念だったわね。もしあたしが日本いたら力になれたかもしれない……」
「別に……もう終わったことだ」
麗秀が二人の会話を横で聞いていると、沁慰が彼女を見た。
「そうだ! 紹介するわ。この子は九能麗秀。従妹の子で、あたしにとっては娘みたいなものなの。だからあなたの妹みたいなものだわ。ちなみ今年から女子高生になったピチピチの16歳よ。麗秀って呼んであげてね」
「姉御の親戚か。子供だとは思ったがまさか16かよ。それにしてもデケェな。あたしより背の高い女を久しぶりに見た」
ブロンドの女性は興味なさそうに、麗秀を見て言った。
麗秀は思う。
……この人も大きい。
たぶん166~169cmくらい。
この人、絶対に白人系のハーフだよね?
背が高いのはそのせいかな?
いや、そんなことよりも……。
先ほど向けてきた威圧的な視線ではなくなっていたが、麗秀は人に見られるのが苦手で、笑顔のまま動けなくなる。
「こらこら、あまりジロジロ見るから固まっちゃったじゃない。麗秀、こっちの娘はアウレリア·ミドリカワよ。レリアって呼んであげて」
「よろしくな、ノッポ少女」
アウレリアはそう言うと、麗秀の頭をポンっと軽く叩いた。
麗秀は、ただ笑顔のまま動かなかった。
そして、内心で思う。
……ノッポ少女って……。
普通に名前で呼んでよ……。
普通に……普通にさ……。
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