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ショッピングモールで、アクセサリーを見たいという由佳里の希望でいくつかのお店をめぐる。これもいいあれもいいといくつかのお店で次々と目移りをした由佳里は、結局一番初めのお店に戻ってピンク色のシュシュを購入した。
「沙羅も何か買えばいいのに」と由佳里は言ったけど、「今日はやめておく」と断った。彼女の好む女の子らしいお店にあるアクセサリーや小物は、可愛いとは思うけれどあまりさらに似あうものではない。
二人で喫茶店に入ってお喋りしながら、私は由佳里と、それから愛那と友達になれて本当に良かったと感じる。初めて喋った時に、この二人ならさらと仲良くしてくれる。そう思った私の直感は間違っていなかった。
休みの日にはよく一緒に出かけるし、学校では常に一緒にいるけれど、愛那も由佳里もさらの中の私の存在には気付かない。まあ、両親ですら気付いていないのだから当然だろう。
私は、私が生まれる以前のさらの記憶を持っている。幼少期に家族と行った旅行先での出来事や、小学校の時の運動会や遠足のことは覚えている。今だって、学校で習うことや一般常識みたいなことも、さらが学べば私も知ることになるし、逆もまた然り。だけど私が生まれてから、さらの過ごす金曜日のことについて私は知ることができない。だから私は彼女に交換日記を提案し、私の過ごす六日間の出来事もさらに伝える様にしている。
私が生まれてしばらくして、私はさらの中で起こっていることを自分なりに調べてみたりした。一般的に私たちの状態は、俗に言う二重人格や多重人格というものに分類されるのかもしれない。人は、特に幼少期の時に、強いストレスや不安を感じた際、それを自分のものでは無いと思い込もうとして自分の中に別の人格を生み出すことがあるらしい。私たちの場合も確かにそれと同じような状況なのかもしれないとは思う。
だけど、私が生まれたのはさらが中学生の時。幼少期とは言えない。稀に青年期や大人になってから起こることもあるらしいけど、その事例のいずれも私とさらの関係性とは異なっているように思えた。
まあ、そんなのは大した問題では無いのだけど。
私にとって重要なのは、私はさらが普通の生活を送れるようになるために生まれた。
その一点だけなのだから。
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