1:26歳

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 ナナは右手を広げて「おいで」と言った。私はナナに抱きつくいてその肩に顔をうずめた。するとナナは私の頭をやさしく撫でる。こうして急にやさしくするところもずるいと思う。 「何があった?」 「上司にボロクソに言われた。それでも頑張ってるのに内藤くんから、だから女は頼りにならないみたいなこと言われた」 「そっか、そんなの無視しちゃえばいいのに。全部受け止めようとするからダメなんだよ」 「無視できるはずないでしょう」 「とりあえずアタシが仕事に復帰したら、内藤のことは蹴り倒してやるから安心しろ」 「内藤くん、今はナナの上司になってるよ」 「マジか。じゃあ、こっそり内藤のロッカーのカギ穴にガムでも詰めておくか」  私がクスクスと笑うとナナはやさしい声で「あんまりがんばり過ぎるなよ」と言った。  ナナの言葉に私の心の中で固まっていた何かがゆっくりと解けていくのを感じた。  すると頭を撫でていたナナの手がゆっくりと移動する。スルスルと服の中に手を入れ、私の耳や首筋にキスをしながらブラジャーのホックを器用に外す。 「せっかくだから、一人エッチも手伝ってあげよう」 「バカッ」  私はナナを突き飛ばし、今度こそ痛がるナナを無視して浴室に向かった。  私の家に来てから、なぜだかナナは私に一人エッチをさせたがる。  マンホールに落ちて意識を失っているときに幽体離脱をしたという。そのとき私が一人エッチをしているところを見たと言っていた。けれどそんなバカげた話を信じられるはずがない。  そもそも目の前に好きな人がいるのに、どうして一人エッチをしなくちゃいけないんだろう。ナナはそういうプレイが好きなの? でも私にそんな趣味はない。  本当にいい加減にしてほしい。だから私はこの女が嫌いなんだ。やさしくしたり、からかったりして、簡単に私のことを振り回して惑わせる。ムカつくし、苛立つし、本当に大嫌いだ。 それなのに、どうしようもなくナナのことが好きだのだ。  私がナナとはじめて顔を合わせたのは高校一年の頃だった。  あのときも私はナナに対して苛立ちを感じていた。はじめて顔を合わせたときから本当にムカつく女だった。
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