憧れのラベンダーの香り

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憧れのラベンダーの香り

 家を新築した時、私は庭にあこがれのラベンダーを植えてもらった。  我が家に、あのラベンダーが毎年咲くなんて、と感激した。  最初にラベンダーの存在を知ったのは、小学生の時だ。  NHKの少年ドラマシリーズに「タイムトラベラー」というドラマがあった。  主人公が理科準備室を開けると、何か実験をした跡がある。  何か香りがする。そして、想定外のタイムリープが起こってしまう。  そうだ。  ラベンダーの香りは、タイムリープする時の大事な鍵だったのだ。  私は、テレビにかじりついて見ていた。  しかし、匂いはわからなかった。  中学生になり、ドラマの原作の「時をかける少女」を読んだ。  しかし、当然ながら、本からも香りはしない。  筒井康隆大先生も、大雑把に「甘いにおい」としか描写していない。  甘いってどんなんや!  そうだ。  ラベンダーが無かったのだ。  あの頃、日本では、特定の場所でしか栽培されていなかった。  母が、香水などつけるはずもない。  片田舎の中学生が、知る術はなかった。  ラベンダーの香りを知ったのは、大人になってからだ。  甘いだけでなく、爽やかで、意識をスキッとさせてくれる感じがした。  先日、中学生に「時をかける少女」を読み聞かせした。  家から摘んでいって、実物のラベンダーの香りをかいでもらった。  すると 「○○ちゃんの、服の匂いや」 と、声がした。  ああ……柔軟剤か。  思い焦がれた香りが、時を経て、何と日常に浸透していることか。  これでは、タイムトラベラーもどこへ跳んでいくか、わかったもんじゃないなと、苦笑いした。      
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