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出費は、えてして重なるもの
今年の我が家は物入りだった。
電化製品は、冷蔵庫と食洗機が壊れたので修理した。洗濯機を買い替えた。
夫と娘の車もそれぞれ不具合が出て、修理にお金がかかった。
家の築10年点検だったので、火災報知機の取り換え、床下の点検、バルコニーの防水工事、食器棚の修理をした。有料である。
「何か他に気になっているところはないですか?」
ハウスメーカーのメンテナンス部門らしからぬ、こじゃれたヘアースタイルの営業メンがうながす。
気になっていると言えば、キッチンの換気扇だ。一番奥のファンが油汚れでべっとりしている。ファンの手前までは掃除するのだが、ファンを外せず、断念してしまう。でも、まめに掃除していればそんなにひどくならなかったはず。なかなか言い出しにくい。ところが、私がチラリと見やった視線の先で察したのだろう。営業メンくんは、心得てますよとばかりに、にっこりする。
「他のお宅ですと、10年点検で換気扇のクリーニングを希望される方が多いですね」
おお、その福音のごとき御言葉! こじゃれたなどと軽く見て申し訳なかった! 普段は他者との一並びを毛嫌いするのに、この時ばかりは「みなさんしていらっしゃいます」に乗っかる。
この料金は、私が払った。15,000円。10年でこの値段だ。これを高いとみるか、否か。いや、あの油汚れは、素人には無理だって。
「どうやって掃除するんか、見てたんけ?」
夫に問われたが、あー、う……んと口ごもる。
「衣装ケースみたいなプラスチックの大きな器に水を張ってた」
見ていたのはそこまでだ。側に居たら、監督しているようでお邪魔だろうと思ったからだ。いや……違う。またお掃除、頼めばいいやんと思って見ていなかったのだ。
はい。次は何とか挑戦してみよう。でも、できなかったら策はある。
そう思うと、気は楽になるものだ。
年も暮れ。もう何も壊れたりしないだろうと高を括っていた。
やられた。
電子レンジだ。
動かなくなる直前に、私は「焼きいも」をした。
さつまいもはじっくり焼くとでんぷんが糖に変わり、甘くなる。このレンジの自動メニューにあるのに、使ったことないなあとやってみたのだ。オーブン機能で50分ぐらいかかる。焼いもはできたが、その後、不能になった。とどめを刺したようだ。
電子レンジはもはや、生活に無くてはならないものになっている。修理をするなど考えも及ばなかった。店に見に行き、その足で買って帰った。
エレベーターで荷下ろしする段になって、店員さんに聞いてみる。
「買ってから9年たってたんですけど、一般的に電子レンジの買い替えはどれぐらいですか」
「9年ですか。長い方ですよ。保証期間が6年になっているのは、それぐらいで機能しなくなるからなんです」
そうか、とホッとする。扱いが雑だったのかと心配していたが、そうでもなかったようだ。
搭載されている機能をかなり使った。私のレパートリーを広げてくれた。
パウンドケーキも何回焼いたかわからない。おかげで、作品まで書けた。
お疲れ様だね。
今年もあと10日だ。
もう何も無いことを祈るばかりである。
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