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空を自由に飛びたいな
先日息子と映画を観にいった。「STAND BY ME ドラえもん 2」だ。
息子は大のドラえもんファンで、公開初日に観てきた。良かったと言うので「ママも行こうかな」と言うと、もう一回観てもいいよと言う。そんなに良かったのか?
ネタバレ御免。
話としては、大人になったのび太が結婚することになり、ハタと思い悩むのだ。本当にボクでいいのか? なんでOKしてくれたんだろ。ボクが幸せになんて、できるのか? それで、過去に確認にいくというわけだ。
息子は、のび太のスピーチにドラ泣きしたと言っていた。
「そんで最後に、菅田将暉くんの『虹』が流れるんだよお」
うん。確かにじんときた。
観終わって、息子と色々なシーンのツッコミどころを言い合う。
「のび太の小学生時代は、思いっきり昭和、平成なのに、そこから15年経っただけで、あんなに進歩せんよねえ」
何と! のび太は自動運転の車で帰るのだ。それも専用レーンで。
息子は私に、この映画のどこを伝えたかったのかと考える。
スピーチでのび太は、両親に感謝の気持ちを語る。
「お父さんお母さんは、これから先の僕たちのライバルです」
こういうことを私に言いたかったのかな。
でも照れくさくて、そこは話題にしなかった。
その場面で、どちらも涙をぬぐっていた。それだけで十分だ。
日々の暮らしの中に、幸せの瞬間はあふれている。
息子が望んでいるのは、そういう幸せの形なのだ。
それは、夢を諦めているわけでなく、妥協でもない。
主題歌もそんな気持ちを歌っている。
息子が小学4年生の時だった。
当時、親子で劇を観る会「子ども劇場」に入っていた。
その日はクラウンと言われる道化師のショーが行われた。
一人のクラウンが客席に下りてきた。ドキリとした。まっすぐこちらに向かってくるのだ。私はバッグで顔を隠す。するとクラウンはそのバッグを隣の席に置き、私の手を取りステージに引っ張っていった。そこからは、無我夢中だった。言葉で指示されるわけではない。真似をしろと身振りされるので、その通りにした。あるところから私が勝手に動くと、クラウンが反応してきた。けっこうノリノリで10分程ステージにいた。まあ元演劇部の血が騒いだのだ。観客の方々は、何だ、打ち合わせしてあったのかと思ったらしい。
その時、息子はどう思っていたか。
ステージでドタバタやっている母に驚愕し、どうかぼくは呼ばれませんように、連れて行かれませんように、と必死に祈っていたらしい。
私は、風船をいくつも持っているような、夢見がちな子どもだった。いつかそのまま空まで飛べると信じていた。でも現実は甘くない。風船を一つずつ手放すことで、地上に下りてきた。それが大人になることだった。
でも誰しもそんな夢みたいなことを望んでいるわけではないんだな。
息子は、元から地に足の着いた生活を大事にしたいタイプなのだ。
ドラえもんに、じんわり感動したし、息子の気持ちもわかった。
けれど私はまだ、手元に風船を残している。
夢を叶えて、空を自由に飛びたいな。
タケコプター?
いやいや、私はのび太じゃない。ドラえもんもいない。
それでもいつかきっと、飛んでみせるよ。
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